家づくりは街づくり
日本の場合、屋根を葺き替えたり、壁を塗り替えたり、あるいは庭に美しい花を飾り、庭木を手入れするのも、家はそこに住む人の顔という意識から、外観にこだわってのことだろう。自分が見て満足すれば、それでよく、この家を高く売ろうなんて下心はない。あるとしたら、ご近所の手前、荒れ放題ではみっともないという恥の部分が大いにあるにちがいない。
街並みということでは、並木の存在は欠かせない。ある街では、植えられて30年以上経つ並木が一斉に切り倒されるということが起きてしまった。大きな葉が落ちて散らかるし、根が太くなって歩道を乗り上げ、でこぼこして歩きにくいからだという。枝が茂って電線にひっかかる、夜は暗くて外灯の光が遮られ、物騒だなどという住民の苦情も多かったからだ。
その場限りの発想をやめ、10年、20年先を見る目が欲しい。
また、それを役所任せ、あるいはデベロッパー任せにせず、植樹を選ぶ段階から住民が加わり、できれば、自ら植えて世話するということにまで関わることが大切なのかもしれない。自分で世話をすれば、そこが共有地である公園であっても歩道であっても、自分たちの庭であるという意識が芽生え、街づくりの実感も湧いてくるというものだ。
自分たちの街をつくるという考え方にはやはり建築協定、住民協定といった共通のコンセプトが大事である。
制約を受けるのは嫌だという人もいるかもしれないが、10年後、20年後の美しい街並みによる土地の価値が上昇することを考えれば納得してもらえるはずである。それに、こうした協定を結べば、近隣同士のつき合いもでき、コミュニティ意識も芽生えてくる。
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